2014/3/6, Thu.

 正午を過ぎて起きるという体たらくは避けたものの、十時起床ではまだまだ遅い。まどろみのなかで左胸の下部が針で刺すようにちくりちくりと痛むのを感じた。米と肉と味噌汁を食べたあとに、近藤和彦Substance』を流しながら日記を書き、空気公団『子ども』をひどく久々にかけて『族長の秋』を音読した。玄関先に干してあった傘をしまいに外に出ると、Tさんが日なたぼっこをしていた。下り坂の入り口にもうけられたガードレールの内側で、置いてある台のようなものに座って遠くを見ていた。写真に撮りたいような構図だった。晴れ空の下で、彼女は何を見ていたのだろうか? 
 昨日とうってかわった晴天から受ける印象よりはるかに寒い日だった。木枯らしかと思う風の強さで、春一番にはまだ遠いらしかった。高校の前の横断歩道で女子高生三人がボタンを押してから写真を撮りはじめた。信号が赤に変わって車がとまるなか、一人が携帯をかまえ、二人が体を寄せてポーズをとった。わずかに車のほうを意識しながらも撮影をつづけ、信号が変わろうとしているのを見てあわてて駆けだし、転がるように道を渡りながら笑い声をあげた、その一連の流れがほとんど映画の一場面のような輝きを放っていた。
 子どもは騒ぐし、土壇場で一時限追加されるしで難儀な労働だった。夜の風は穏やかで、昼のほうがむしろ寒かったような気がした。日付が変わる前にプルーストをわずかに読んだ。