2016/12/23, Fri.

 椅子に就くと、南窓から射し入る光が炬燵テーブルの天板に激しく溜まって、視界がひどく眩しい。父親がその上に広げている新聞の表面も、金属質に輝いている。外の山は光によって完全に均されて、滑らかな薄青さのなかに何の起伏も窺えず、麓からは煙が立って、同じ色の背景にすぐに同化していく。それより手前の川沿いの木々も、樹冠のあたりだけを気体じみた薄緑に浮かびあがらせて、風があるらしくさわさわ揺れるのに光が弾けるが、体のほうは蔭に落ちこんでいる。父親がひらいていた新聞を持ちあげて、ばさりと二つ折りにして置くと、陽射しのなかに塵が瞬間、湧き出たように散らばって、空中に乱れた。

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 真冬が訪れる前にそれを飛び越えて初春に入ったかのような麗朗な日で、マフラーを巻かずに出ても何の問題もなかった――むしろ首を守っては、暑いくらいだっただろう。前夜の雨の跡はもはや消えて、路上には乾いた木の葉が、道端には絨毯めいて敷かれ、道の真ん中にはそれから外れて独立して落ちており、その一枚を踏むと、繊維が砕ける複雑な音が足下から響いた。坂道にも木の屑が多数転がっており、気まぐれにそれらのうちのいくつかを踏みながら上って行った。