2021/10/13, Wed.

 わたしが生まれた根源であるあなた、暗闇よ、
 わたしは焔よりもあなたを好む。
 焔はある限られた区域に光を注ぐことにより
 世界を区切り、
 その外側にいる者はだれも焔を感知しない。

 けれども暗闇はすべてのものを受け容れる。
 さまざまな姿や焔や、動物たちやわたし、
 手当たり次第に、
 人々、そして神々――

 一つの大きな力がわたしの近くで
 動き出すかもしれない。

 わたしは夜々の働きを信ずる。

 (神品芳夫訳『リルケ詩集』(土曜美術社出版販売/新・世界現代史文庫10、二〇〇九年)、54; Du Dunkelheit. aus der ich stamme,; 『時禱詩集』 Das Stunden-Buch より; 第一部「僧院生活の巻」より)



  • 九時ごろにいちど覚めて、わりあいはっきりしたあたまだったのだが、やはり眠気もあったので起きられないまままどろみつづけ、一一時四〇分に離床。おそくなってしまったが(といっていつもどおりだが)、気持ちの良い睡眠だった。休日の夕方前とかに昼寝をすると麻痺的な快楽をおぼえることがあるが、それにちかい感じがあって、通常の眠りでそうなるのはめずらしい。水場に行ってきてからきょうも瞑想。天気はひきつづき雨降りで気温も低めである。
  • 上階へ。きのうのカレーをつかったドリアを食す。母親はまもなく勤務に行った。父親も山梨に行っていてきょうは帰ってこないという。新聞からイラクアフガニスタン関連。イラクでは国会の選挙が終わって、定数三二九のうち反米の有力者でシーア派指導者のサドル師の勢力が七三議席をえて第一党を維持と。政権連立もとうぜん彼が主導することになるので、米国への対応がどうなるか、とのこと。駐留米軍は戦闘任務を今年までだったか、ちかいうちに終えるらしいのだが、その後も駐留自体はつづくようで、しかしサドル師はそれをみとめず追い出しにかかるのではないかと。ほかの勢力は国会議長かなにかの派閥とマリキ元首相の派が三八と三七で、サドル派も二〇伸ばしたというから前回は五〇議席ほどだったわけだがそれで第一党だったというから、ずいぶん小党分立的な体制なんだなとおもった。
  • アフガニスタンは一五日でタリバンが政権を掌握してから二か月になる。経済の混乱や市民の困窮がはなはだしいようで、タクシー運転手をやっていたひとの証言が出ていた。タリバンが政権を握るとともに燃料が高騰し、外国人も退避したため経済活動がなくなって解雇されたと。一か月のあいだ職をさがしているが見つからない。所持金も底を尽きたのでいまはモスクで寝泊まりし、妻と八人の子どもがはなれたところにいるが、子どものうちのひとりを子のない夫婦に「売る」ことをかんがえていると。また、望みではないが収入のためなら過激派にはいることもかんがえているとのこと。タリバン少数民族の元国軍兵士ら一三人を処刑するなどのふるまいをいっぽうで見せつつも、そういう状況だから欧米の人道支援を受けられなくなるのはまずいというあたまがあるようで、協調姿勢を見せている。先日カタールで米国とタリバン幹部が会談をしており、タリバンのほうは米国から人道支援の協力をとりつけたと発表したが、米国側の声明では協議をしたという表現にとどまっており、今後のタリバンの行動によって判断されるという点が強調されているよう。バイデンはアフガン撤退にかんしては批判を受けているし、人権重視の姿勢も標榜しているから慎重にならざるをえず、米国内でタリバンの資金の凍結はつづいている。ただ中国がタリバンに接近しているので、なにもせずにいても中国の影響力がたかまるのを座視してしまうことになり、タリバンに流用されずに資金を市民にとどけるうまい方法がないかと苦心しているらしく、現金を輸送して銀行などをとおして直接困窮した市民にくばるのはどうか、などの案が出ているらしい。
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  • 夜は書抜き。リチャード・ブローティガン福間健二訳『ブローティガン 東京日記』(平凡社ライブラリー、二〇一七年)とニール・ホール/大森一輝訳『ただの黒人であることの重み ニール・ホール詩集』(彩流社、二〇一七年)。神品芳夫訳『リルケ詩集』(土曜美術社出版販売/新・世界現代史文庫10、二〇〇九年)も先般終わらせてあったのだけれど、手帳にページをしるしてあったこまかな箇所がのこっていたのですすめた。この日で終わらなかったが、しかし正式な書抜きはもうやったし、これはもうよかろうとあきらめることにして、翌木曜日には三冊まとめて返却してしまった。