ところでお手紙をいただいたいま、ぼくはあなたに、最愛のひとよ、急いで次の提案をしたい――つまり、ぼくらはもう決してお互いになにか悪くとるようなことはしますまい、二人とも責任をとることはできないのだから。距離はひどく離れていて、それを克服しつづけることはたいへん辛く、ときおり心はだれてしまい、すぐに気をひきしめることができません。その上ぼくのみじめな性質が加わるのですが、それはただ三種類のこと、飛び出し、くず折れ、やつれ果てることしか知りません。この三つの可能性の交替がぼくの生活をなしています。哀れな、讃嘆すべき最愛のひとよ、こんな営みのなかに敢えて入ってこられるとは。ぼくは完全にあなたのものです。それをぼくは、三十年間のぼくの生活を展望することによって、言うことができます。
(マックス・ブロート編集/城山良彦訳『決定版カフカ全集 10 フェリーツェへの手紙(Ⅰ)』(新潮社、一九九二年)、236; 〔労働者災害保険局用箋〕一九一三年一月二一日午後二時半)
いちど七時くらいに覚めて携帯をみたおぼえがある。そこですでに手や腕をさすったりとうごきはじめたのだが、なかなかからだを起こすにいたらず、しかもきのうは比較的はやめに寝たはずなのに例になくなんだかねむたいというか、布団のなかにいるのが精神をここちよくゆるませている感覚があって、それにしたがって重力に負けているうちにいつかまたまどろんでおり、窓外で子どもたちが保育園から出てきているから九時ごろかなとか、また気づかないうちになかにはいっていったようだとか観測しているうちに時はながれて、けっきょくようやく起き上がって携帯をみるともう一一時になっていた。きのうきょうとどうも遅い。しかもそこからさらに、一二時半までだらだらとどまってしまった。水を飲みつつティッシュと抗菌化スプレーでパソコンの埃を取り、スイッチをつけるいっぽうじぶんの鼻のなかにもティッシュを突っこんでおく。用を足したり、寝床にリセッシュをかけたりも。天気はきのうにつづいてまったき曇天、正午を過ぎたというのに部屋のなかは薄暗く、そのうちに明かりをつけることになったが、一二月にはいっても冷えこみは、やはり地元のそれとはいくらかちがうなという感じで、そう言いながらもきょうだらだら寝たのは気温の低さもかかわっていたのかもしれないが(のちにはエアコンをつける時間もあったし)、それでも実家のほうが起き抜けの空気はよほど冴えていたはず。ここではいまだに掛け布団もいちまいだけで寝ており、それで不都合もおぼえていない。布団にリセッシュをかけたあとも風をとおしたくて窓をしばらく開けていた。そうすると涼しさが部屋の内にも浸透し、椅子にすわる身にもふれてきて、肌寒さにはいたらないものの、さすがに瞑想をするときには窓をもどす。時間が遅くなったのでサボろうかともおもったが、すこしのあいだでもじっとしておくのは肝要だろうと静止して、じっさい一〇分ほどのみじかさで切ってしまったが、それでもからだはそこそこ変わる。すでに一時五分だった。食事へ向かい、まず入り口そばの床に置いてある水切りケース内のプラスチックゴミを始末。しゃがみこんだまま鋏で切るものは切って袋に入れ、流しのしたの戸棚に入れておく。それからまな板などを取り出して、きのう買ってきたキャベツの葉を剝がして細切りに。トマトも買ったのだったと冷蔵庫をみておもいだしたので、それも食べることに。二つのみはいったパックで、値引き品のラックにあったので買ってみたのだけれど、値段をあらためて見たら半額になっていたのでそんなに下がっていたのかとおどろいた。食った感じはふつうに新鮮なのでなぜ下がっていたのかわからない。食事はサラダと、即席の味噌汁(シジミ)と、きのう買ったランチパック(ツナマヨネーズ)。食事中はウェブをうろついたんだったかな。日記の読みかえしをしたのは食後だった気がする。洗い物をかたづけて白湯を飲みつつ。歯も食後さほどしないどこかのタイミングではやばやと磨いている。そういえばきょうは起きて洗面所に行ったときにあたまにけっこうおおきな寝癖がついていたので、顔を洗うついでに髪も濡らしていくらかかき混ぜ、室を出るとドライヤーで乾かしておいた。一年前の日記では往路がなかなかわるくなかった。
なるべくはやくついておおくの時間をかせいだほうがよいというわけで、つねになく脚をすばやくうごかしてずんずんすすんでいった。快晴とばかりおもっていたが東の坂にはいれば南の空に雲はひろくて、しかも下腹が象の肌の色にしずんで雨のなごりをおもわせるむき、ひかりはまだとおって日なたのなかに乾いた落ち葉がおびただしいけれど、樹冠がかかったあたりは路面に水気が去りきらず、べたべた貼りついた葉っぱたちが栗の皮の色に濃く染まっていた。柔軟をしたので脚はよくうごく。街道ではまだ工事がつづいており、囲いのなかで整理員が車をとめているそのむこうには道沿いで段のうえに乗った一軒に真っ赤なモミジが、さらにさきでは黄葉まじりの丘の緑とそれに寄りそう水色の空、道路には家蔭がななめにさしこまれつつもあかるみもまだかたく、コートを着なくてもよいのではという陽気だった。裏道にはいってあるきながら丘の林をながめれば、おおかたは緑のなかで高いほうなど褐色黄色橙がまざり弱いまだらをなしているが、それらすべて色はちがってもみな植物というより土をかためてつくったような乾きの質感におだやかである。このころにはさすがに足もつかれてきてペースがすこし落ちてはいたものの、それでもふだんよりそうとうはやく、たぶんいつもの一. 五倍か一. 七倍くらいのはやさであるいているなと当てずっぽうにかんがえていたが、じっさい平常よりも一〇分ははやく職場につくことになった。裏路地のとちゅうには見上げる高さのハクモクレンが一本あるが、先日は甘めに色変わりしたおおぶりの葉たちがまだちからづよくこずえに張って壮観だったのが、もうなかばは落ちてかるくなり、横をとおるさいにも風もないのにひとりでにはなれて枝とふれあう音をもらしていた。
そのまま「ことば」および「読みかえし2」ノートも読む。あいまは手や腕をさすったり、指をストレッチしたり。手指のストレッチは再開してみるとじっさいかなりよい感じがする。あきらかに背とか肩のほうにも効いているし。本を読みながらできるのもかんたんでよい。音読を終えた時点でたしかもう三時二〇分くらいだった気がするのだが、それからもすこしのあいだ、椅子にすわったままモーリス・ブランショ/粟津則雄・出口裕弘訳『文学空間』を読んだ。そのあいだも手のゆびを伸ばしている。そのあと寝床に逃げることにしてたたみあげてあったのを床にもどし、ゴロゴロしながらひきつづきブランショをすすめる。きょうは250からはじめて、いまのところ280まで。ぜんぜん読めねえし四日までに間に合わないなとおもっていたが、きょうはなかなか調子が良く、よくわからない部分はむろんあいかわらずおおいがわりとわかる部分もあり、あとわかるわからないではなくピンとくるような箇所もあり、つまりそれは書抜きをするべき箇所ということだが、わからないところにもこだわらずにけっこうスムーズにすすめている。そうはいってもやはり400くらいまであるので、四日までに読み終わるかというとたぶん無理だが。しかしほかのみんなもけっこうそうじゃないかと見込んでおり、だから(……)くんあたりが言い出していったん延期になるのではないかと予想している。一週間か二週間か。
五時を越えるくらいまで寝床で読み、立ち上がると水を飲みつつまた手指をストレッチして、それからきょうのことをここまでつづっていま六時直前。きょうは起きてすぐのころには、というのは瞑想をやっていたあたりだが、なんだか気分が外向的というか、やっぱり一日一回、ちょっとだけでもそとに出てあるいたほうがいいよなあというこころが湧いていたのだけれど、この時刻になると窓外はもう真っ暗でレースのカーテンのさきに保育園の二階の蛍光灯と、子どもたちやスタッフがもうほぼいないらしいそのしたの部屋の空虚さが透けて見えるだけだし、空気も寒そうであまり出かける気にはならなくなってしまう。しかし夜歩きもまたよいものだ。
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いま二四時四五分。七時ごろに夕食を取ったあと、またゆびを伸ばしながら音読したりして、八時四五分ごろに夜歩きに出た。歩きに行くと書くことが増えるからなあと億劫がってしまいがちなのだけれど、日々をちっともコンスタントに書ききれていない現状、記憶をわすれてしまうならそれでもうしかたはなく、あるきに出たからといって感受したからといってそれをかならず書かねばならないということもないので、そんなことは気にせずに歩きたくなったらどんどんそとに出たほうがよい。それで三〇分ほどあるいてきた。アパートを出て左方、南に行き、路地の出口で西に曲がって、(……)通りまで行くとそこを北向きにはいってまっすぐ道に沿ってすすみ、東西に走る街道めいた車道にいたってまた折れるのは東方向、すこしだけすすんで南へともどっていけば(……)通りのとちゅうに出るから家からほど近い。おおまかにぐるっとまわるようなかたちであるいてきたわけだ。ジャージのうえにダウンジャケットだが、さすがにそこそこ寒かった。
帰ってくると二六日の記事を書く。ようやく会合の通話のことを書きはじめることができた。一〇時にいたったあたりで料理。野菜のごった煮スープが食いたくなったので。うどんがないのは残念だが、あした買ってきて追加する手もある。具はブナシメジ、白菜、ニンジン、タマネギ、それにのちほどシーフードミックスもくわえた。麺つゆがもうのこりわずかだったのですべて入れてしまい、味付けは味噌。まえの味噌ももうないというか容器に滓がくっついているだけだったので、そこに鍋の汁を入れて溶かしてはらい、あたらしい味噌をつかったが、このあたらしい味噌というのはいぜん実家に土産として「(……)」で買っていったものを、先日行ったときにつかってみたけどそんなにだったというので、それならちょうど味噌がなくなっていたしおれがもらおうと回収してきたものだ。「本田味噌本店」という京都にあるらしい店の「あさげ」というやつ。つかってみると、たしかにそんなに目立った味ではないというか、ふつうにうまいけれどすごくうまいとおもうわけでもない。量や、こちらの調理の腕前の問題もあるかもしれないが。なにしろ出汁も切らしているので、麺つゆのあまりと味噌と味の素でどうにかするしかなかった。というかそもそも味噌の味の良し悪しをそう言えるような精度のたかい舌をもちあわせていない。とはいえ実家でつかっている愛媛県だったかの麦味噌はたしかにうまい。買ってあるからあげようかと先日言われたが、あれはそこそこ高いのだろうしわるいからじぶんで買ったものをもらうにとどめた。
一〇時二〇分くらいで煮る態勢にはいり、弱火で煮ているあいだはまた二六日を書きすすめるのだが、やはりすこし書けばもう背中がこごってきてしまって、寝床に逃げてちょっと胎児になったり腰や背をこすりつけたりしてからまたがんばるというありさまで、中断をはさまねば文を書きつづけることすらできない。それでなかなかすすまず、一一時半くらいまでやってもたいして書けず。鍋に味噌を入れて、手首を振ったりしてから、零時を越えたあたりで食事を取った。あたたかいスープのうまさときたら。二杯食ってしまってやばい。あしたうどんを入れたいのに。
したは夕食時あたりで読んだ(……)さんのブログから。
「今に人間が進化すると、神様の顔へ豚の睾丸(きんたま)をつけたような奴ばかり出来て、それで落つきが取れるかも知れない。(…)」
(夏目漱石「虞美人草」)
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- 「ことば」: 31, 9, 24, 32 - 37
- 「読みかえし2」: 527 - 534
- 日記読み: 2021/12/1, Wed.
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Helen Sullivan with agencies, “Russia-Ukraine war at a glance: what we know on day 281 of the invasion”(2022/12/1, Thu.)(https://www.theguardian.com/world/2022/dec/01/russia-ukraine-war-at-a-glance-what-we-know-on-day-281-of-the-invasion(https://www.theguardian.com/world/2022/dec/01/russia-ukraine-war-at-a-glance-what-we-know-on-day-281-of-the-invasion))
A security officer at Ukraine’s embassy in Madrid was injured when he opened a letter bomb addressed to the ambassador on Wednesday. The security officer suffered light injuries, Spanish government official Mercedes Gonzalez told broadcaster Telemadrid.
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The European Commission president has proposed a special tribunal to investigate and prosecute Russia’s “crime of aggression” against Ukraine. Ursula von der Leyen also wants to use the proceeds of Russian funds that have been frozen under western sanctions to aid Ukraine.
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The head of Russia’s foreign intelligence service, Sergei Naryshkin, discussed nuclear issues and Ukraine in a meeting this month with the CIA director, William Burns, the RIA news agency reported. Elizabeth Rood, the charge d’affaires at the US embassy in Moscow, previously told RIA that Burns “did not negotiate anything and he did not discuss a settlement of the conflict in Ukraine”.
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Moscow has promoted the chief engineer of the Zaporizhzhia nuclear power plant, Yuriy Chernichuk, to become its head, according to Russia’s nuclear agency Rosenergoatom. The position has been vacant since October, when Kyiv says the plant’s boss Ihor Murashov was abducted by Russian authorities.
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Ukraine claims to have killed another 500 Russian soldiers in the last 24 hours, bringing the total who have died in combat since 24 February to about 88,880. The general staff of the armed forces said it had taken out three more tanks and six armoured personnel carriers.
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Ukrainian president Volodymyr Zelenskiy said he did not believe Russian president Vladimir Putin will use nuclear weapons. He made the comment while speaking by video link at the New York Times ‘DealBook’ summit in New York City. It comes as Russian foreign minister Sergei Lavrov said it was vital to avoid any kind of military confrontation between nuclear powers, even if it only involved conventional weapons, the TASS news agency reported.
Russia’s defence minister has said it will focus on nuclear arms infrastructure in 2023, including facilities to accommodate new missile systems. Sergei Shoigu told a meeting of the board of the department on Wednesday that it would be a priority for Russia next year. “When preparing the list of major construction facilities for 2023, special attention will be paid to construction in the interests of the strategic nuclear forces,” Shoigu was quoted by RIA news agency as saying.