2021-02-01から1ヶ月間の記事一覧

2021/2/28, Sun.

(……)そして最後に、つぎのことを言っておこう。期待されているであろうこととは反対なのだが、称賛され求められているのは、多義性(意味の多重性)ではなく、まさしく両義性や二重性であるということだ。願望としての幻想は、すべてを(何でも)聞くこと…

2021/2/27, Sat.

(……)R・Bは、このように二重の意味をもつ語に出会うたびに、逆に、ふたつの意味の両方を語に残しておこうとする。まるで、ふたつの意味のどちらかがもうひとつにウインクをして、語の意味がそのウインクのなかにあるかのようだ。そのウインクによって、〈…

2021/2/26, Fri.

彼の言述のなかでは「ドクサ」(「世間一般の意見」)の語が大いに用いられているが、「ドクサ」とはまさしく〈悪しきもの〉である。だがその内容によって「ドクサ」だと定められるわけではない。表現形式によってのみ決められるのであり、その悪い表現形式…

2021/2/25, Thu.

しばしば彼は、〈複数主義〉と曖昧によばれている一種の哲学に頼ることがある。 彼がこのように複数的なものに固執するのは、性の二元性を否定するためのひとつの方法だからではないだろうか。ふたつの性が対立することが、「自然」の法則であってはならない…

2021/2/24, Wed.

〈切り離す〉ことは、古典芸術におけるきわめて重要な行為である。画家は、線や影を「切り離し」、必要におうじて拡大したり、逆さにしたりして、作品をつくりだしてゆく。たとえ作品が単調(end90)だったり、無意味だったり、そのままのもの(デュシャンの…

2021/2/23, Tue.

(……)彼は、冷静になって態度をはっきりさせている身体のねじれ(不機嫌な顔)をそっけなさによって示していたのではない。そうではなく、発する言葉がなくて、その失語状態の脅威にあらがっているという、主体のひどい失敗状況を示していたのだ。これは、…

2021/2/22, Mon.

ファレーズの町の薬局で、ブヴァールとペキュシェは、ナツメのペーストを水に入れて実験する。「ペーストは豚脂の外皮のようになった。ゼラチンが入っていることを外示していた」。 デノテーション[外示]とは、学問的な神話なのであろう。言語活動の「真の…

2021/2/21, Sun.

彼は、独占的な関係(所有欲、嫉妬、いざこざなど)を望んではいなかった。広げられた共同体的(end85)な関係も望んでいなかった。彼が求めていたのは、そのつど特権的になる関係であった。繊細な差異によって特徴づけられる関係であり、類い稀なきめをもっ…

2021/2/20, Sat.

彼は、ニーチェのなかで読んだ「道徳性」という言葉(古代ギリシア人における身体の道徳性)の(end83)定義をさがしており、この言葉を道徳と対立させて考えている。だが、概念化することができない。ただ、実践の場のようなものを、ひとつの〈トピカ〉を認…

2021/2/19, Fri.

倒錯(ここでは、ホモセクシュアリティとハシッシュというふたつのHの倒錯)による悦楽のちからは、つねに過小評価されている。倒錯とは、ただ〈幸せな気分にする〉のだということを「法」や「ドクサ」や「学問」は理解しようとしない。あるいはもっと明確に…

2021/2/18, Thu.

知識人(あるいは作家)の歴史的使命とは、今日においては、ブルジョワ意識を〈解体〉することを継続し、強めてゆくことである、と仮定しよう。そうすると、解体のイメージについて、きわめて明確でありつづけなければならない。すなわち、わざとブルジョワ…

2021/2/17, Wed.

なまの状態とは、食べ物とおなじく、言語にもかかわっている。この(「貴重な」)両義性から、彼は自分の昔からの問題をふたたび取りあげる方法を見出す。〈自然なもの〉という問題である。 言語活動の場においては、デノテーションは、実際にはサドの性的な…

2021/2/16, Tue.

(……)たとえば「構造」は、はじめは良い価値であったが、あまりにも多くの人が不動の形態(「設計図」、「図式」、「型」など)だと受けとめているとわかったとき、価値は失墜した。幸いなことに「構造化」という語があり、それがあとを引き継いで、〈行為…

2021/2/15, Mon.

わたしにとって、わたしの身体は、よく見られる二つの様相のもとでしか存在していない。偏頭痛と官能的欲望である。(……) 言いかえるなら、わたしの身体は英雄ではないのだ。苦痛あるいは快楽が軽くて分散しているという特徴(偏頭痛にしてもわたしの生活に…

2021/2/14, Sun.

彼の夢は(うちあけてもよいものだろうか)、ブルジョワ的な生活様式(いくぶんかは現在もあるし――かつてもあった)のいくつかの〈魅力〉(価値観とまでは言わないが)を社会主義社会に移し入れることであろう。それを彼は〈不都合なこと〉と呼んでいる。こ…

2021/2/13, Sat.

彼が〈契約〉について(協定について)もっている第一のイメージは、ようするに客観的なものである。記号、言語、物語、社会などが契約によって機能しているが、その契約はたいてい隠蔽されている。だから、それを批判する作業とは、道理やアリバイや外観の…

2021/2/12, Fri.

「真実は、固さのなかにある」とポーは言った(『ユリイカ』より)。したがって、固さに耐えられない者は、真実の倫理にたいして自分を閉ざしてしまう。言葉や命題や観念が〈固まって〉、固形状態へ、〈ステレオタイプ〉の状態へと移行するやいなや、彼はそ…

2021/2/11, Thu.

(……)彼はなにかを発明することはないし、組み合わせることさえしない。移動させるだけだ。彼にとって、たとえることは論拠になるのである。(……) (石川美子訳『ロラン・バルトによるロラン・バルト』(みすず書房、二〇一八年)、73; 「たとえは論拠にな…

2021/2/10, Wed.

(こんなことを書くとすぐに、それが想像界による告白であるように思えてくる。むしろわたしは、なぜ抵抗したり欲望したりするのかを知ろうと夢想して口にする言葉のように、ただ自分の考えを言えばよかったのだろう。しかし不幸なことに、わたしは断言する…

2021/2/9, Tue.

「たとえば、あまり政治にかかわらずに生きることをわたしは望んでいる。わたしは政治的主体でありたくない、という意味だ。だがそれは、数多くの政治の対象でありたい、ということではない。ところが、政治の対象か、主体か、のどちらかでなければならない…

2021/2/8, Mon.

「アマチュア」(名人芸をめざしたり、競争に勝ちたいと思ったりせずに、絵画や音楽やスポーツや学問を実践している人)。「アマチュア」は、自分の悦楽を続けてゆく(〈アマトール〉とは、愛し、ずっと愛しつづける人のことだ)。アマチュアはけっして(創…

2021/2/7, Sun.

ある時期に、彼は二項対立に夢中になっていた。彼にとって、二項対立はほんとうに愛する対象だったのである。この考えかたもいつかは使い尽くされてしまうはずだ、とはどうしても思えなかった。〈ひとつの相違点だけから〉すべてを言うことができる、という…

2021/2/6, Sat.

毎週、ある音楽演奏を「フランス・ミュージック」で耳にするのだが、彼にはそれが「愚かしい」ように思われる。そのことから、彼はつぎのように考える。愚かしさとは、固くて割ることのできない核であり、〈根源的なもの〉なのであろう、と。それを〈科学的…

2021/2/5, Fri.

リュクサンブール公園で陣取り遊びをしていたとき、わたしの最大の楽しみは、敵を挑発して、無謀に自分の身を敵の捕獲権にさらすことではなく、捕虜たちを救い出すことであった――その結果、すべての勝負を循環状態にしてしまうことになり、遊びは振り出しに…

2021/2/4, Thu.

かつて、バイヨンヌからビアリッツまで、白い路面電車が走っていた。夏になると、車室のない全面開放の車両が連結された。トレーラー車だ。みんな、大喜びで乗りたがった。広々とした風景のなかを進みながら、眺望と動きと風とを同時に楽しんだ。今ではもう…

2021/2/3, Wed.

〈リストに登録されている〉。わたしは、ある(知識人階級の)場所に、(一流とは言わないまでも)特権階級の居住地に、登録され、住所指定されている。そのことに抵抗するには、心の中にひとつの主義をもつしかない。〈アトピア〉主義(漂流する住まい、と…

2021/2/2, Tue.

彼の不安はときおりとても強くなる――一日中ものを書いたあとの夜は、恐怖のようなものにまでなったりする――。それは、自分が二重の言述を生みだしていると感じることからきていた。方法が、いわば目的を超えてしまっているのだ。というのは、彼の言述の目的…

2021/2/1, Mon.

『S/Z』のなかで、レクシ(読みとりの断片)は、占い師が杖で切り分ける大空の一片にたとえられている。このイメージを彼は気に入っていた。かつて、占い師がその杖で空のほうを、すなわち指し示すことのできないもののほうを指し示しているすがたは、美し…